1963(昭和38)年3月11日、市村清夫妻出席の下、「佐賀県体育館」の落成式および寄贈式が盛大に執り行われました。
佐賀城公園内に位置するこの体育館は、“県民みんなの役に立つものを贈って、故郷の佐賀県に恩返しをしたい”と願った市村が私財2億有余円(当時)を投じて建設・寄贈したもので、設計はル・コルビュジエに師事し、モダニズム建築を実践した坂倉準三氏。正面は王冠、側面は馬の鞍型をした斬新なデザインや、全国に先駆けて導入された冷暖房設備などがオープン前から注目を集めました。
「将来を担う青少年の心身を健全に育成することこそが、国家や社会の発展の最大の基礎である。私が故郷に対して何らかの恩返しができるなら、ぜひ彼らの精神と肉体の練磨に役立つような道場にしたい」
佐賀県体育館は、まさに市村の思いの具現化だったといえましょう。
1992(平成4)年4月、「市村記念体育館」に改称。
以来、九州屈指の体育館として県内のスポーツ行事はもとより、国内のスポーツ大会、バレーボールや柔道の国際親善大会、さらに美術展やオペラ、演劇などに利用されてきました。2018年の『備前さが幕末維新博覧会』では、メインパビリオンにもなりました。
しかし、竣工から60年余を経て建物の老朽化が進み、また耐震性の問題も浮上してきたことから、2019年、体育館の改修が決定しました。
「佐賀の未来を創る、佐賀が未来を創る、文化体験・創造拠点」を目指すべき姿として、独創的な外観を残しつつ、内部を全面リニューアル、2026年、市村記念体育館は文化・芸術施設として生まれ変わる予定です。
なお、2022年3月、佐賀県とリコー、リコージャパンの間で「佐賀県とリコー三愛グループの志を育んだ絆の地『市村記念体育館』に係る未来創造協定」が締結されました。