第12回

観光日本の一助に資したい

三愛ドリームセンター

「三愛」が日本一の場所・銀座4丁目角に開店してから15年の月日が流れ、木造2階建ての建物は改築の時期を迎えていました。

市村は、狭い土地を最も有効に生かすには実用より宣伝価値に重きを置くべきだと考え、思考を巡らせた末に到達したのが、総ガラス張りの細長い円筒形ビルでした。このビルには奈良・法隆寺の五重塔からヒントを得た建物の基本構想をはじめ、独特の美しい金属カーテンやドーナツ形のショーケースなど、市村のアイデアがふんだんに用いられています。

着工に先立ち、建設現場の板囲いに市村の挨拶文が掲げられました。

「日本一のここに、世界一珍しい建物を新築して、観光日本の一助にしたい、という念願のもとに新築に着工します」

“世界一珍しい建物とは一体どんなものだろう”、町の人たちはビルが出来上がっていく様子を毎日ワクワクしながら眺めていました。新しいビルは建築段階からすでに大きな宣伝効果をもたらしていたのです。

完成した三愛ドリームセンターは地下3階、地上9階、ネオン塔を入れると地上48mの高さで、光の殿堂、光の塔と呼ばれるにふさわしい光輝を放ち、街頭を照らしました。

さらに市村は総仕上げとして、ドリームセンター前に立つ交番をやはり円筒形で前面をガラス張りにしたおしゃれなものに変身させ、警視庁に贈呈。こうして「日本一の場所にふさわしい美しい名所にする」という市村の計画が見事に結実しました。

1963(昭和38)年1月13日、世間をアッと言わせた“午前0時の開店披露宴”をつつがなく終えて、開店の朝を迎えました。開店の1時間前にすでにビルを取り巻くほどたくさんのお客さまが訪れ、当日の来店者は12万人に達したと言われます。

完成から60年、市村が建てた三愛ドリームセンターは老朽化と安全性の確保と社会的責任を考慮して建て替えられることになりました。新しいドリームセンターは2027年に完成し、再び銀座のランドマークとなります。

今日のひとこと
〜市村清の訓え〜


今日のひとこと 〜市村清の訓え〜