今月の市村清

Monthly

“今月の市村清”―2024年7月編―

生き生きと生きるヒント

-お金よりも信用が大切-

「人生100年時代」と言われるようになりました。市村清は自分の老後の暮らしについて「東京の郊外に2000坪くらいの土地を買い、メロンや蘭をたくさん植えて珍しい木を庭師と一緒に探してきて心地よい庭園をつくる。家は小さなものでいいから、お能の舞台などもしつらえて、自然の中で暮らしを楽しむのだ。そうしたらどんなに楽しいだろう・・・」と、夢を抱いていました。しかし、残念ながらその夢が叶うことはありませんでした。市村の人生から老後の知恵を学ぶことはできませんが、「生きるとは何か」についてのヒントはたくさん残しています。
お金は無いよりあった方がいい。これほど便利なものはないからです。14歳で野菜売りの手伝いをはじめた市村はその後、銀行の事務見習いに就くなど家計を助けるために働きましたが、お金を儲けることはうまくいきませんでした。家柄、学歴、コネクションなど好条件を持つ人にはどうしても勝てないことを知った市村はある日こんなことを思いつきます。
「人と逆をいったらどうだろう。金は要らん、地位も要らん、名誉も要らん、そうしてやるだけやってみよう。」酒やタバコ、そしてすべての娯楽をやめ朝5時に起床、夜10時に就寝。その間やるべきことは誠心誠意行う。そんな生活を3年程続けるうちに「市村は無欲で真面目だから」と信頼され仕事をくれる人がどんどん増えていきました。そして5年目にしてついに理化学研究所から重役に迎えたいという声がかかりました。

「これは5年間の精進努力だ。それもなまじっかな精進努力ではない。他人は、“自分は努力している。”と言うけれども、それは体温で言えばせいぜい38度くらいの努力ではないか。私は40度くらいの努力をしていたのではないか。」さらに「世の中の多くの人は、金さえあればと言うが、どんな場合でも信用がいかに大切かということ。信用を得るには、そう骨は折れない。一生懸命やりさえすればいいのだから。金を貯めようと思うのは非常に骨が折れる。金銭観として覚えておいて欲しい。信用を得れば金はひとりでについてくる。」市村は自身の著書の中でこのように綴っています。
できれば苦労はしたくない。苦労せずに幸せをつかむことができればそれにこしたことはない。と多くの人は思います。しかし、貧農の子として生まれ、数々の困難を克服しながら社会的基盤を築きあげていった市村が人生の過程で得た哲学は困難な道を選ぼうというものでした。「人生は結果ではなくそのプロセスに妙味があるものだ。何になるかということではなく、どういう生き方をするかということが大切なのだ。」と。うまくいかないことを他人のせいにしたり、他人をうらやむということとは無縁だった市村の市村らしい生き方。人生は決断の連続ですが、そのひとつ一つがプロセスでもあります。市村の生き方を学び、自身の人生を実り多きものにしたいですね。

今日のひとこと
〜市村清の訓え〜


今日のひとこと 〜市村清の訓え〜