今月の市村清
Monthly
“今月の市村清”―2021年4月編―
生誕100年記念事業
市村自然塾 関東の開塾
うららかな春の日差しをうけて春本番。日ごとに暖かくなりました。いまから21年前の2000年4月、市村清の生誕100年を記念して、各所で大規模な祝賀イベントが行われました。市村の故郷佐賀では、リコー三愛グループと地元サガテレビが共催して小・中学生を対象にした「こんなものがあったらいいなアイデアコンクール」を開催。アイデアコンクールという発想がいかにも、市村を伝承していると思いませんか?審査会場となった市村記念体育館には小・中学生380名が集まりした。また、三愛会ではたくさんの来賓をお招きして華々しく生誕100年の記念式典を市村の誕生日にあたる4月4日にリコーの大森本館ホールで開催しました。
祝賀準備から遡ること2年前、生誕100年をどのようなかたちで迎えるか?議論を重ねた中で発案されたのが、市村の思いに立ち返り世の中の役に立つため、次世代を担う子供たちの健全な育成に役立つことに取り組もうということでした。政府もこれまでの義務教育の在り方を改め、2002年4月からゆとり教育の導入が決まり、将来を担う子供たちを育成する機運が高まっていました。
都会育ちの子供たちが四季折々の自然とふれあい、大地からの恵みに感謝し、仲間との共同生活を通して人間形成に必要なことを学ぶ。その学び舎として、複数の候補予定地から神奈川県松田町寄(やどりき)が選ばれ、塾の建設と農地の準備が始まりました。
寄は、丹沢大山国定公園・西丹沢の山々や水源林に囲まれ、耳をすますと鳥のさえずりや近くを流れる中津川のせせらぎが聞こえ、夏にはホタルが棲息するなど自然が色濃く残っています。この辺りの農地は、農業従事者の高齢化にともない休耕地となっていた場所で、近所に住む農家の皆さんも子供たちの農業体験で使ってくれるのであればと、農地の借用を快諾してくれました。
こうして、人々の努力と善意によって、『市村自然塾 関東』が無事、開塾したのは2002年4月のことです。今年も第20期生が入塾して活動がスタートします。塾で食する野菜は自分たちが育てた野菜。野菜嫌いな子供も自身が育てた野菜の味は別格のようで、率先して食べてニコニコ笑っています。土に触れ土を耕すことで大地の恵みを肌で感じ、身体を動かし汗をかきながら働くことの気持ち良さ、達成感とともに仲間を思う心を養うこと。時間や自分たちで決めたルールを守り、テレビも携帯も無い世界で過ごすのは窮屈この上ない環境だと思います。しかし、回を重ねるごとに鍬の扱いも上手になり、自然の中での遊び方を考え楽しむことを見つけ、目を輝かせながら創意工夫をしている子供たちの姿には成長を感じます。
少年時代に野菜売りの経験もある市村にとって、自然塾の様子を天上から眺め、ほほえましく思っていることでしょう。よりよい社会の実現のために、これからの社会を牽引していくリーダーとなる人材が自然塾から育ってくれることを切に願うばかりです。